最低賃金、引き上げ後にも最低限の生活費を下回る=エコノミスト

 【クアラルンプール】 エコノミストらは、マレーシアの最低賃金について、1,500リンギへの引き上げ後にもまだ最低限の生活費を下回っていることに懸念を示している。


 マレーシア科学技術大学のジェフリー・ウィリアムズ経済学教授は、現在の最低賃金1,500リンギが中央銀行バンク・ネガラ(BNM)が2018年に推計した2,700リンギ(都市部の単身世帯)や従業員積立基金(EPF)の推計1,870リンギ(都市部の単身世帯、公共交通機関利用の場合)、2,490リンギ(同、車所有の場合)といった生活費を下回っていると警告。最低賃金を雇用主の負担なく引き上げるために、一定所得水準と実際の所得の差額分を政府が現金支給する逆所得税制度や、政府が全国民に一定額を定期的に支給するベーシックインカム制度などの導入も検討すべきだと述べた。


 ウィリアムズ教授はまた、「外国人労働者には常に最低賃金しか支払わない」という文化からも脱却すべきだと強調。近隣諸国との賃金格差が狭まっているため、フィリピン、インドネシア、タイなどの労働者がマレーシアで働くメリットが少なくなっており、それが労働力不足を引き起こしているとした。


 バンク・イスラム・マレーシアのチーフエコノミストであるフィルダオス・ロスリ氏は、最低賃金の引き上げにより失業率やインフレ率の上昇は起こっていないとし、最低賃金の引き上げは、最低所得層の労働者が不当に低い賃金から保護され、最低限の生活を維持するためのものであることを明確にしなければならないと述べた。また、経済活動がマレー半島西海岸に集中していることが地域間格差を生んでいるとし、農村部のインフラ整備およびマレー半島東海岸やサバ州、サラワク州の製造業投資の強化を行うべきだとした。
(ザ・スター、8月5日)