最低賃金の実施詳細がいまだ不明、産業界から不満の声

【クアラルンプール】 イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相が5月1日付けで最低賃金を1,500リンギに引き合えると発表したものの、実施まで10日を切ったにも関わらず施行に関わる政令が出されておらず、例外規定などの詳細もまだ明らかになっていないため、産業界は対応に苦慮している。
産業界では多くの企業が新型コロナウイルス「Covid-19」禍のダメージからの回復途上にあることや世界的なインフレの悪化、ウクライナ戦争の勃発といったタイミングの悪さもあって、実施延期を求める声が多い。イスマイル首相も従業員5人未満の零細企業を免除すると発表。M.サラバナン人的資源相も打撃を受けた観光などのセクターの延期を認める意向を示しているが、それ以上の具体的な指針は明らかにされておらず産業界からは不満の声が上がっている。
マレーシア経営者連盟(MEF)のサイド・フセイン会長は、どのように施行されるのか、どのセクターが免除されるのかといった情報がほとんどないと指摘。現時点へは発表されただけで「最低賃金命令」(MWO)はまだなので、遵守しなくても処罰をうけることはないと述べた。
またMEFとしては企業が最低賃金を支払う能力があるかどうかで免除範囲の線引きをすべきと考えているとし、5人未満としている企業規模に関しては20人以下に拡大するよう求めていると述べた。
マレーシア製造業者連盟(FMM)のソー・ティエンライ会長は、会員企業を対象に行った調査で100リンギの引き上げは許容できることが分かったとし、2022年第3四半期に100リンギだけ引き上げ、その後2023/2024年に1,500リンギにするとの提案を行ったことを明らかにした。
マレーシア中小企業(SME)協会のディン・ホンシン会長は、仮に中小・零細企業が免除や延期の対象となっても大企業が最低賃金を引き上げた場合、賃金差から労働力が大企業に流出し中小・零細企業で人手不足に陥る懸念があると主張した。
(ザ・スター、4月14日)