ポスト・コロナの働き方:リモートワークのし易い産業とは?

前回は、対面重視の日本人の働き方が、リモートワークの浸透にとって阻害要因に成り得ることを述べました。しかし、リモートワークへの転換のし易さがコロナ対策に効果を持つことは第682回で紹介した研究が示すとおりです。であれば、リモートワークが可能な仕事に就く人は、可能な限りリモートワークを継続し、第二波に備え新しい働き方に慣れる努力をしておくべきでしょう。

では、リモートワークのし易い産業とはどのようなものでしょうか。Crowley & Doran(2020)は、職業情報提供サイトO*Net、およびCentral Statistics Office of Ireland (CSO)のデータを用いて、アイルランドにおけるソーシャルディスタンスの取り易さ、リモートワークのし易さを産業別に推計しています。例えば、情報・通信や、専門・科学・技術職は、リモートワークがし易く、かつソーシャルディスタンスも取り易い産業といえます。また、農業、製造業は、リモートワークは難しいですが、フェイストゥーフェイスの場面は少ないので比較的ソーシャルディスタンスの取り易い産業といえます。一方、ホスピタリティや卸・小売り、輸送、美容・理容などは、リモートワークも、ソーシャルディスタンスを取ることも難しいので、感染のリスクが高い産業といえます。これに関連して、所得水準の高い都市、人口密度の高い都市、インターネットの普及した都市、高等教育の普及した都市ほど、ソーシャルディスタンスを取り易く、リモートワークがし易い産業が集積していることが示されています

ここから見えてくるのは、リモートワークが出来てソーシャルディスタンスも取れる知識産業が、コロナ禍において感染や失業のリスクが低い、最も耐性の高い産業といえそうです。知識産業従事者は、場所の制約が小さいので、このまま大都市に居続けることも出来るでしょうし、コストの低い地方に移り住むことも出来るでしょう。一方、他の多くの産業は、リモートワークがし難く、ソーシャルディスタンスも取り難いという意味で、コロナ禍において感染や失業のリスクが最も高いといえそうです。従って、これらの産業に従事する人は、感染や失職のリスクを減らすために、地方に回帰し、農業や製造業などのソーシャルディスタンスを取り易い産業に就くことが視野に入ってくると考えられます。

Crowley, F., & Doran, J. (2020). Covid-19, occupational social distancing and remote working potential in Ireland (No. SRERCWP2020-1). SRERC Working Paper Series.

この記事を書いた人

國分 圭介(こくぶん けいすけ)

一般財団法人機械振興協会経済研究所・研究副主幹、公益社団法人国際経済労働研究所・理事。東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
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