マレーシアでの整理解雇(人員削減)の遵守事項

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マレーシアでの整理解雇の考え方

結論、マレーシアでは雇用主は経済な理由や、利便を目的とした組織改編の権利が認められており、余剰人員が発生した場合、整理解雇を行う権利が与えられています。

For it is the right and privilege of every employer to re-organise his business in any manner he thinks fit for the purpose of economy or even convenience; and if by implementing a re-organising scheme for genuine reasons of better management and economy the service of some employees become excess of requirements, the employer is entitled to discharge such excess.

East Asiatic Company (M) Bhd. v. Valen Noel Yap [1987] 1 ILR 363

但し、マレーシアでの整理解雇は「雇用主が組織改編を行う際の最終手段」という考え方に沿って実施される必要があり、雇用主は整理解雇を避けるべき方策から検討しなければなりません。マレーシアでは安直な整理解雇は不当解雇と裁定される可能性があります。

また、整理解雇の実施検討から完了するまでの手順は「法令遵守事項」と「ガイドライン等で遵守が推奨される事項」が混在する為、これらを事前に区別し、理解しておく事も大切です。

本記事では、マレーシアで雇用主が正当な整理解雇を完了させる為に必要な知識を紹介します。以下画像に記載されるようなポイントを体系的に確認する事が出来ます。

人的資源省と労務局が共同出版した、
民間部門における整理解雇実施のガイドラインを参考に弊社で独自作成

正当な整理解雇を実施する為に

整理解雇が不当解雇と裁定されない為には、以下ポイントを証明する必要があります。

  1. 整理解雇実施の事由を証明する
  2. 法令・慣習に基づき、正当な方法で人員削減を実施した証明をする
  3. 会社は悪意なく、人員削減を実施した証明をする

1. 整理解雇の実施事由を証明する

労使関係法20条1項に基づき、従業員は不当な解雇に対して訴え出る権利を擁する為、雇用主は正当な解雇事由を証明する必要があります。

余剰人員の実情と人員削減の必要性を証明する客観的な証拠があれば、以下のような事由で整理解雇を実施する事が可能です。

  • 業績不振による人員削減
    • 事業所の完全な閉鎖
    • 事業縮小
    • 支社の閉鎖
    • プロジェクトの失注 (等
  • 経営体制の変更による余剰人員の削減
    • 会社の合併や買収 (等
  • 業務の効率化による余剰人員の削減
    • 業務のアウトソーシング
    • ITのシステム導入 (等

2. 法令・慣習に基づき、正当な方法で人員削減を実施した証明をする

雇用法の非対象者が整理解雇の対象となる場合、雇用法とその関連規則を遵守する必要はなく、企業との雇用契約が優先されます。しかし弊社見解では、以上を対象に整理解雇を行う場合も、雇用法とその関連法に則って実施されるのが一般的かと存じます。もし、貴社特有の就業規則や雇用契約書の条件に従い、整理解雇を実施される場合は、先ず貴社で関わりのある弁護士や専門家へお伺い頂く事を推奨致します。

(a) 対象者の選定

原則、合理的な理由があれば会社主導で整理解雇の対象者の選定が可能です。

it is also for management to decide the strength of its staff which it considers necessary and vital for efficiency in its undertakings. Where the management decides that workmen are surplus and that there is, therefore , a need for retrenchment, an arbitration tribunal will not intervene unless it can be shown that the decision was capricious, without reason or was mala fide or was actuated by victimization or unfair labour practice.

Ong Lean Phaik v C.F. Sharp & Co (M0 Sdn Bhd, Penang Industrial Court Award No. 121/80.

ただし、以下2点を遵守する必要があります。

① Foreign Worker First Out (雇用法 60条N)

雇用者が人員削減を行う必要がある場合、マレーシア人労働者と同様の仕事に従事する全ての外国人労働者の雇用契約を解除するまで、マレーシア人労働者の雇用契約を解除してはならない。

② Last In First Out (LIFO) の原則 (慣習)

雇用者が人員削減を行う必要があり、同一の仕事カテゴリーにおいて、ローカル従業員の整理解雇が必要になる場合、勤続年数の短い者から解雇を実施しなくてはならない。

※ 厳密には、LIFOの遵守義務はケース次第ですが、妥当な理由がない限り、遵守しなければいけないとされています。弊社見解では、基本的に遵守義務があると考えて問題無いかと存じます。

In effecting retrenchment, the employer should employer with the industrial law principle of LIFO unless there are sound and valid reasons for departure. Thus, an employer is not entirely denied the freedom to depart from this principle

“It must be noted, however, that LIFO is not an absolutely mandatory rule (it is not a statutory provision) which cannot be departed from by an employer when retrenching staff.”

Supreme Corporation Bhd v Doreen Daniel & Ong Kheng Liat (Award 349 of 1987)

(b) 解雇対象者への事前通達

雇用法12条2項と3項に基づき、企業は解雇対象者に以下の予告期間に基づいて、解雇予告を与えなくてはいけない。

(勤続期間)(事前の通知期間)
2年未満 4週間前迄の通知
2年以上 5年未満 6週間前迄の通知
5年以上 8週間前迄の通知

※ただし、雇用法13条1項に従い、通知の期限を待つ事なく、相手に対して予告の期間もしくは不足分の期間に発生したはずの賃金を賠償として支払うことによって、契約解除する事が可能です。

(c) 補償金等の支払い義務と支払い期限

契約解除の当日から数えて7日以内に、 雇用者から被雇用者に対して支給されなくてはならない。(1980年雇用規則6項/11項)

(勤続年数) (支払額)
2年未満 10日分の賃金 ✖️雇用年数
2年以上 5年未満 15日分の賃金 ✖️雇用年数
5年以上 20日分の賃金 ✖️雇用年数

※ 雇用期間が一年に満たない者に関しては、勤務日数から計算して最も近い勤務月数をもって案分する。 [/ht_toggle]

[ht_toggle title=”残年次の有給休暇への支払い” id=”” class=”” style=”” ]年次の有給休暇を消化する前に、雇用契約が解除された場合には、雇用者はその消化されなかった年次有給休暇に相当する手当を、契約解除日までに被雇用者に支給する。 (雇用法60条E 3A項) [/ht_toggle] [ht_toggle title=”解雇の予告通知期間の代わりの賠償金の支払い” id=”” class=”” style=”” ]解雇通知の期限を待つ事なく雇用契約を解除する場合、(雇用契約解除日を含む)契約解除日までに、不足分の期間に発生したはずの賃金を賠償金として被雇用者に支払う。 (雇用法13条1項/21条1項)[/ht_toggle]

(d) 労働局への通達

P.U(B)430/2004に基づき、雇用法の対象者の整理解雇/VSS(MSS含む)/一時解雇/減給措置を実施する場合は、実施前と実施後に、最寄りの労働局まで報告(PK Formの提出) 義務があります。

実施の30日以上前、実施後の14日以内、30日以内それぞれで提出するフォームがあります。

(PK Form のダウンロードはこちらをクリック)

※ 雇用法1955年の非対象者に上記を実行する場合、企業に通達義務は課されていません。しかしながら、弊社で労働局へ直接、本件の問い合わせを行った所「当局への通達を奨励している」との事です。

※ VSSとMSSとは?
VSS = Voluntary Separation Scheme (自主退職制度)
企業が独自のクライテリア、条件で従業員の自主退職を促す事が出来ます。特徴は従業員が制度への申込をした場合、企業は申入れを受け入れるしかなく、優秀な従業員の流出に繋がる可能性があります。

MSS = Mutual Separation Scheme (相互同意制の退職制度)
VSSと異なるのは、企業の任意で特定の従業員からの申入れを却下出来る点です。優秀な従業員の流出を防ぐ事が出来ます。


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3. 会社が悪意なく人員削減を実施した証明をする

遵守義務

企業は整理解雇を行う権利が認められていますが、判例では善意や正しい慣行に基づいて進める必要が指摘されています。

the employer is entitled to discharge such excess. But this right of the employer is limited by the rule that he must act bona fide and not capriciously or with motives of victimization or unfair labour practice.

In East Asiatic Company (M) Bhd. v. Valen Noel Yap [1987] 1 ILR 363

原則、雇用主が
「(要件1.) 正当な事由」に基づき、
「(要件2.) 法令を遵守した方法」で人員削減を実施すれば、
「(要件3.) 悪意なく整理解雇が実施された」と裁定されるケースが殆どですが、「1975年労使協調の行動規範」に則った行動が、要件3の観点で、裁定に加味される場合があります。

※ 「労使協調の行動規範 (The Code of Conduct for Industrial Harmony 1975)」とは人的資源省とマレーシア経営者評議会(マレーシア経営者連盟(MEF)とマレーシア労働組合連合(MTUC)の前身)の間で締結された協約。整理解雇以外に関する規定も含まれている。

協約ではあるものの、法的拘束力が発生し得る点に留意する必要があります。

In making its award, the Court may take into consideration any agreement or code relating to employment practices between organizations representative of employers and workmen respectively where such agreement or code has been approved by the Minister.

労使関係法 第30条5A

悪意の無い整理解雇を証明するには?

1975年労使強調の行動規範では、人員削減に関して、企業が講じるべき措置とその手順が規定されています。

① 整理解雇を避ける為に経費削減を行った点を証明する

(従業員の代表者、労働組合と協議を行った上で)
人員削減を回避/最小化する為に、下記の措置が検討・実施されたか。

  1. 新規採用を凍結
  2. 残業時間を制限
  3. 休日労働を制限
  4. 週の労働日数 / シフト数を削減
  5. 労働時間を削減
  6. 補償金の支払いの下、自主退職 / 定年退職 制度の機会を提供する
  7. *再訓練、配置転換により業務内容/部署を変更
  8. *減給措置
  9. 法定の定年を超えた従業員の契約解除を行う

※ 人的資源省と労務局が共同出版した、民間部門における整理解雇実施のガイドライン(Garis Panduan Pengurusan Pemberhentian Pekerja)では、最終的な経費削減の施策として減給措置を認めています。また、減給措置と配置転換を行う場合は、労働組合もしくは従業員から書面による同意が必要であると総括しています。

② 整理解雇を実施する上で、従業員への配慮を見せた点を証明する

(従業員の代表者、労働組合と協議を行った上で)
下記の措置が手順に沿って検討・実施されたか。

  1. 従業員へ整理解雇実施の背景や方法を説明する
  2. 解雇対象者への出来る限り早めの警告を通達する
  3. 労務局と協力し、解雇対象者の転職支援を行う
  4. 時間をかけた段階的な整理解雇を実行する

③ 解雇対象者の選定が適切で、客観的な基準に沿って作成された点を証明する

選定基準は従業員の代表者または労働組合と協議した上で作成されます。
また、以下事項が選定基準として認められます。

  1. 事業所または事業の効率的な運営の必要性
  2. 個々の労働者の能力、経験、技能および職業資格
  3. 勤続年数やステータス(外国人/カジュアル/非正規雇用/正規雇用)への考慮
  4. 年齢
  5. 家族状況
  6. 国家方針に従ったその他の選定基準

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