労働生産性に見合った賃金支払われていない=中銀

(3月29日)

 中央銀行バンク・ネガラは、2018年度年次報告書の中で、マレーシアでは労働生産性に見合った賃金が支払われていないと指摘した。

 中銀は同報告書の中で、マレーシアの生産性水準は他の中所得国に匹敵するが、それでも先進国の水準をはるかに下回っているとし、技術の進歩と人的資本の開発のペースが遅いためだと分析した。その上で、生産性の低さを考慮したとしても、シンガポールや韓国といった近隣諸国より賃金水準が低すぎると指摘。マレーシアで1,000米ドルの価値を生み出している労働者に340米ドルしか支払われていないが、他の国では510米ドル支払われており、33.33%も少なくなっているとした。 

 またこうした低賃金の傾向が卸売、小売、飲食(F&B)、宿泊などの業界において特に顕著であり、経済活動全体の19%、総雇用の27%を占めていると指摘。これらの産業は労働集約的で低熟練労働者に依存しており、低賃金の背景には外国人労働者を含む低熟練労働者が多いことを背景に賃金交渉力が弱いことがあるとし、その結果、これらの産業では2016年時点で平均賃金が1,727リンギと、全国平均の2,463リンギを30%も下回ったと指摘した。

・高学歴の新卒初任給が鈍化傾向

 中銀はまた、新卒の初任給について高スキル人材の需要低下を受けて高学歴ほど伸びが鈍化する傾向にあることを指摘。ディプロマ(短大卒に相当)以上の学歴については初任給が2010年以降むしろ低下傾向にあるとした。ディプロマの場合、2010年は平均1,993リンギだったが、2018年には1,983リンギ、修士の場合は更に深刻で、2,923リンギから2,707リンギに低下したという。

 一方、低スキル人材の需要の高まりを受け、PMR(初等中学校卒相当)やSPM(高等中学卒業相当)の初任給は上昇傾向にあり、2010年に比べてそれぞれ4.6%、2.3%上昇したという。