マレーシア汚職摘発委員会法改正に関して

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汚職を防止するための2009年マレーシア汚職摘発委員会法 (Malaysian Anti-corruption Commission Act 2009)が2018年に改正された。その最も重要な改正点は、会社関係者が贈賄行為を行ない、それが摘発された場合、その会社関係者のみならず、会社とその取締役等も刑事責任を負わなければならないということだ。この罰則規定の17A条が2020年6月より施行された。有罪の場合は、賄賂額の10倍または100万リンギットのいずれか高額な方の罰金、または20年以下の禁固刑、もしくはその両方という厳しい処罰が科せられるというものだ。

このニュースはもう皆さんご存知だと思うが、皆さんが心配されているのは会社のDirectorの私が処罰されるのか?という点だと思う。日本人駐在員の方々は十分に気をつけて頂きたい案件だ。一方で汚職摘発委員会法17A条(5)に基づいて、贈収賄防止のために会社が取るべき適切なガイドライン(Guidelines on Adequate Procedures)が公表され、会社としてこのガイドラインを遵守していることが証明されれば、処罰を避けることができる。会社としては是非この会社が取るべき適切なガイドラインを理解し、以下5つの原則に従って汚職防止策を整備してリスクヘッジしておきたい。以下が5つの原則だ。

1.Top level commitment(経営陣の直接関与)

経営陣が誠実さと倫理観を持ち、適用法令を遵守し、汚職リスクを管理するための責任を全うする。具体的には;

  • 汚職防止コンプライアンスプログラムを策定し、定期的に見直す
  • 組織内に誠実性の文化を築く
  • 汚職防止に関する組織の方針とコミットメントを社内外の関係者へ伝達するよう指示する
  • 汚職の疑いがある事案、汚職防止コンプライアンスプログラムの不備などに関する内部通報制度を奨励する
  • 汚職問題を担当し、従業員や関係者へアドバイスや指導を行う適任者(外部の人間も可)を配置する
  • 汚職問題担当者へ適切な権限を委譲する
  • 監査の結果、リスク評価のレビュー、管理手段、および指導評価などが経営陣に報告される

2.Risk assessment(リスク評価の実施)

汚職のリスク評価は、組織の汚職防止活動の基礎となるものであり、法律や環境の変化があった場合にリスク評価を行い、分析、評価、優先順位の決定をする必要がある。経営陣はこのリスク評価によって特定の汚職リスクを軽減させなければならない。また、適時のリスク評価に加え、3年に一度の定期的なリスク評価も行う。リスク評価には以下が含まれる。

  1. 組織のガバナンス体制や内部統制の脆弱さを起因とする汚職や不正がないか?
  2. 不正な支払いを偽装する可能性のある金融取引がないか?
  3. 汚職リスクの高い国や産業での事業活動がないか?
  4. 汚職防止に関連する法的要件や規制要件に関して、代理店などの外部関係者の違反がないか?会社は外部関係者の行為に対しても責任を負う可能性がある
  5. 会社の汚職を助長させるサプライチェーン内の取引先(エージェント、ベンダー、請負業者、サプライヤーなど)との関係がないか?

汚職のリスク評価は、各社が独自で行えるが、外部の専門コンサルタントに依頼することを勧める

3.Undertake control measures (管理措置の実施)

組織のガバナンス体制や内部統制の脆弱さを起因とする汚職や不正に対処するために、組織の規模や性質に適した対策を導入する必要がある。その方法として以下が挙げられる。

(1)Due Diligence

会社は正式な関係を結ぶ前に、関連する当事者または要員(取締役、従業員、代理人、ベンダー、請負業者、サプライヤー、コンサルタント、役人など)デューデリジェンスを実施するための基準を確立する必要がある。その方法には、バックグラウンドのチェック、書類審査、インタビューなどがある。

(2)内部通報制度

会社は以下を行う必要がある。

  • 内部通報制度を導入し、内外の関係者が匿名で汚職案件または汚職防止プログラムの不備を通報できる仕組みを作る。内部通報用の専用電子メールの準備など。
  • 汚職案件や汚職防止プログラムの不備などを、通報するように奨励する。
  • 内部通報者の身元および報告された情報の機密性を確保するための安全な情報管理システムを確立する。
  • 誠実に報告を行う者に対する報復を禁止する。

(3) ポリシー及び手続きの策定

会社は以下のポリシーと手続きを確立する必要がある。

  • 贈収賄、汚職防止ポリシー又はステートメント
  • 利益相反
  • 贈答品、接待、おもてなし、旅行など
  • 寄付とスポンサーシップ(政治献金も含む)
  • 簡易支払い
  • 銀行決済の署名権限の分担や複数化などの財務面でのコントロール
  • 決済権限の分担などの非財務面でのコントロール
  • 汚職防止監視体制の不備を管理し改善
  • これらの手続きに関する文書管理

4.Systematic review, monitoring and enforcement
(組織的な見直し、モニタリング及び執行)

経営陣は汚職防止プログラムのパフォーマンス、効率、有効性を評価するために定期的な見直しが行われ、プログラムが実施されていることを確認する必要がある。見直しは内部監査または外部の関係者による監査がある。見直しによって汚職防止管理を改善させる機会を作る。これらのために会社は以下を考慮する必要がある。

  •  見直しの対象範囲、頻度、方法をカバーするモニタリングプログラムを計画、策定、実施する。
  • 汚職防止対策に関連して、適任者を特定して内部監査を実施するためのコンプライアンス機能を確立させる。
  • 汚職に関連する会社のポリシーと手続きについて継続的に評価と改善を行う。
  • 会社が汚職に関するポリシーと手続きに従って運営されていることを確認すべく、最低3年に1回、資格のある独立した外部業者(MS ISO 37001の監査人など)による外部監査を検討する。
  • 従業員が如何に汚職防止のポリシーと手続きを遵守しているかどうかをモニターする。
  • プログラムに違反していることが判明した従業員に対して懲戒処分を行う。

5.Training and communication(トレーニングとコミュニケーション)

会社は、ポリシー、トレーニング、内部通報制度、違反への懲戒などをカバーする内部及び外部のトレーニングとコミュニケーションを導入し普及させる必要がある。

(1) ポリシーの伝達

会社の汚職防止ポリシーは一般に公開されるべきであり、また全ての従業員及び関係者に適切に伝達されるべきだ。その際に会社は、伝達すべき重要なポイント、対象者、方法、時期や使用言語などを検討しなければならない。伝達方法として以下が挙げられる。

  • 会社のイントラネットまたはウエブサイト
  • メール、ニュースレター、掲示板
  • 業務行動規範、就業規則
  • ビデオセミナー
  • 全社的説明会

(2) トレーニング

会社は汚職防止を完全に理解させるために、従業員と関係者に適切なトレーニングを実施する必要がある。

  • 汚職防止に関する内容を盛り込んだ紹介プログラム
  • 各職種に特有な汚職リスクを盛り込んだプログラム
  • 企業研修プログラム、セミナー、ビデオ研修、社内研修
  • イントラネット、ウエブベースのプログラム
  • 全社的研修
  • 社員旅行
  • 奉仕活動 

以上。
弊社では、日系企業が上記のガイドラインを遵守できるような仕組み作りを請け負う外部業者と打合せを重ね、皆様へご紹介できるような体制作りを行っています。

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