マレーシアで成績不良や不正行為に対して処分を下す際の留意点

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本記事では、マレーシアで従業員のマネジメントに関わる方むけに、成績不良や不正行為に対して処分を下す際の留意点を紹介しています。

マレーシアは慣習法(コモンロー)

経営を行う以上、解雇や減給、降格などの懲戒処分の検討・実施する場面は必ず訪れますが、マレーシアでは実施が難しいと(一般的に)言われています。理由は、成文法での規定が殆ど無く、慣習法に沿って対応する必要がある為です。

慣習法とは、社会の成員の間に存在する一定の慣行のうち、その慣行が成員によって法的拘束力があるものと意識されているもの。

(出典:Wikipedia)

必須の知識であるものの、慣習法を知る為には過去の判例を参照する必要があります。
慣習・判例についてのまとまった資料はないため、情報収集が煩雑だというお声にお応えし、本資料では慣習に則った懲戒処分の実施手順をご紹介します。

▲ この資料の正確性の確認と採否はお客様の責任と判断で行って下さい。弊社は、 本資料に起因して発生した損害・不利益等について、一切責任を負いません。
▲ 本資料を無断で引用・転載することは禁じます

雇用契約違反発生時の3つの対応

調査により被雇用者の雇用契約違反が発生した場合、雇用者は以下の懲戒処分を実施できる。 雇用法第14条1項

  • 予告なしの解雇
  • 降格
  • 停職処分(および解雇より軽度な適当な処罰)

→しかし….

どの程度の違反にどのように対応すれば正当な対応として見なされるか、の成文法は存在しない

みなし解雇

みなし解雇」が認められており、誤った対応をした場合、退職後に従業員が訴えてきた場合には不当解雇と裁定されるこがある。

不当解雇と裁定されないために

慣習・判例(コモンロー:過去の判例から導き出された原則)に従い対応することが必要。
マレーシアでは慣習・判例もふまえ、従業員の成績不良や不正行為へ対応する必要がある。

参考記事

ケース別対応の流れ(刑事事件・契約違反・成績不良)

刑事事件の場合

警告書なしで解雇が可能

※注意点:自主退社すると言って退社した社員が後で不当解雇として訴えてくる場合に備え、事件と証明できるようポリスレポートを必ず提出する。


雇用契約違反の場合

警告書(warning lettter)を発行し、サインをもらう。

→改善が見られない場合、懲戒処分の実施が可能。

成績不良の場合

以下の流れを何セットか行い、成績不良であること、および会社が改善の余地を与えたことを証明できることが必要。

  1. 警告書(warning letter)の発行
  2. 改善期間を設ける(期間は会社主導で決定可能)
  3. 勤務評価表にサインをもらう(成績不良が改善されない証明)

※よくある間違い 

✖警告書は3枚出せば解雇できる

→ケースごとに警告書の発行枚数は異なる。警告書発行以外の対応が重要。

従業員から警告書や評価表へのサインを拒否されたら?

①客観的な証拠を使って、従業員へ説得を試みる

②show cause letter(理由呈示命令書)を発行する

①を試みてもサインに応じなかった場合、拒否理由を明示するようshow cause letterを出して最終通告を行います。

よくある相談例①:勤続年数が長く成績不良の従業員への対応

日系企業でよくある長年勤務の従業員の問題

  • 年功序列型の賃金体系のため、長く働く従業員の賃金や職位がどんどん高くなっていく。
  • 昇格させるものの実際には、定年退職を目前にパフォーマンスが悪く、モチベーションも低い状態。
  • 給与と能力にギャップがある管理職が増える。
  • 日系企業の駐在員(MD)は約3~5年で入れ替わり、長年勤務で成績不良の従業員の問題がそのまま残り続ける。
  • マレーシアでは長年勤務している→会社はパフォーマンスを認めているとみなされ、解雇がしづらくなる。

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特定の社員への早期退職のオファーは可能?

特定の従業員へ早期退職をオファーすると…

→自主退社したとしても、「会社側から退社するよう圧力をかけられた」とされ

見なし解雇と訴えられる可能性あり

それでは、どのような対応が可能か?

対応①新しい評価制度のもと成績不良を証明する

長年勤務している→会社は今までその従業員のパフォーマンスを認めているとみなされてしまう。
直近の成績不良のみでの解雇は不当 (過去からの成績不良を証明できないと解雇は難しい)

  • 大義名分を掲げ、全従業員へ評価制度を変えることを説明。
    例:新しい競争を勝ち抜くためには生産性の向上が必須。よって本日を第二創業日として新しい評価制度を実施していく。
  • 長年勤務の社員の成績不良を証明する。
  • 全従業員に対し、新しい評価の元、成績評価を実施する。
    ※あくまでも平等な成績評価を実施する必要がある。 
    ※評価項目を刷新してまで実施する必要はなく、評価方法を変えるだけでも問題はない。

参考記事:成績評価に大切なポイント

対応②早期定年退職制度を全社的に実施

特定の個人へ早期退職をオファーすることは危険なため、退職金とともに全社的にオファーすることは問題ありません。

留意するポイント

  • 優秀な社員が辞める可能性がある。
  • 一度制度を設けると、制度を撤廃するのに労力がかかる。
  • マレーシアの雇用法には退職金の支給規定はないため、会社にとっては損失となる。

参考記事:自主退職制度(VSS)実施時の注意点

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対応③その従業員が定年になるまで待つ

マレーシアでの定年退職の最低年齢60歳
従業員がその年齢になるまで待てば、企業には退職金支給の義務はない

参考記事:マレーシアでの定年退職Q&A

よくある相談例②:成績不良からの、正社員登用の見送り

試用期間であれば会社判断で解雇できる?

 試用期間中の従業員でも、突然の解雇は不当

試用期間中でも、正社員と同等の権利を持つとみなされる。

成績不良による解雇を行いたい場合

正社員と同様に、成績不良を証明する手順を数回踏む必要あり。

よくある相談例③:病気で休みがちの従業員への対応

マレーシアの雇用法では病気休暇(Medical Leave)が定められてあり、就業年数によって付与日数が決まっている。
病気休暇と認められるためには証明書(Medial Certificate)の提出が必要。
提出がない場合、報告を怠った場合は病気休暇と認める必要はない。(雇用法第60条F2項)
病気で休みがちな社員がいる場合、証明書の提出を徹底させる。

参考記事:マレーシア雇用法Employent Act 1955とその関連規則

①証明書(Medical Certificate)の真偽の確認

従業員自身で病院を選んでいる場合があり、嘘の証明書の可能性あり。

対策:証明書が本物か疑い、指定医(Panel Doctor)での証明書の提出を求める。

②証明書(Medical Certificate)が本物の場合

マレーシアでは昇給と賞与は会社主導で決定が可能。
病気休暇の取得日数を成績評価へ反映させ、昇給と賞与を抑えることも可能。
※雇用契約等で、賞与の支給について規定ががる場合は減額不可能。

対策:病気休暇取得日数を成績評価へ反映する。

③病気により業務追行能力が疑われる場合

医師が該当の従業員に対して「業務遂行に支障あり」と診断した場合、最終手段として解雇(Medical Board Out)が可能。
※異動や、回復するまでの期間を検討・考慮する必要あり。

対策:Medical Board Outを行う

参考記事:従業員の病気やケガを理由にした契約解除 = メディカルボードアウト (Medical Board Out) のマレーシアでの実施要件

異動を行う際の注意点

  • 妥当な理由がない限り、第三者からみての降格的な異動は従業員の同意が必要となるため注意。
  • 水平異動に伴う諸手当の変更→移動先の基準に従うことが前提で、雇用契約書に支給規定がなければ会社主導で変更することが可能
    ※例:交通費の支給規定が支店ごとで異なる、など

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