昨年の求人数、増加するも月収2千リンギ以下が大半

【ペタリンジャヤ】 求人サイトに登録されている新規求人数は昨年、ロックダウン後の経済回復により増加したものの、最も増えたのは月収2,000リンギ以下の求人だった。
 社会保障機構(SOCSO)による雇用保険制度(EIS)レポートによると、政府の求人ポータルサイト「MYFutureJobs」に登録された求人情報は、2021年には前年の74万5,304件に対して232.8%増の248万577件に達したが、最も多かったのは月収1,200-2,000リンギの求人で、全求人248万件のうち57.6%を占めた。2020年では同月収帯は31%に過ぎず、2,001-3,000リンギが60%を占めた。2021年に最も求人が多かった業種は製造業で60万3,216件、次いで宿泊・飲食業が32万3,624件、卸売業が24万9,744件だった。
 オンライン求人サイトのジョブストリートでも2021年には月額給与2,500リンギ以下の求人が増加した。1,000-2,499リンギの求人数が前年比1.5倍以上となり、飲食、ケータリング、レストラン、製造、生産、小売、商品などの業種が上位を占めた。帰国した外国人労働者がマレーシアに戻ることが難しくなっており、これまで外国人労働者が担っていた低賃金の仕事の求人が増えたという。
 ジョブストリートがまとめた「サラリー・レポート2022」によると、ロックダウンやデジタル化により、飲食、ホテル、レストラン、建築、建設、セールス&マーケティングなどで給与が減少しており、2021年の第1四半期から第3四半期にかけ、給与の中央値が前年同期比40%減となっている。食品・飲料業界が最も打撃を受けたという。
 同レポートでは、新しい働き方として配車や食品宅配サービスに携わることで月給2,000リンギ程度稼げるようになり、また、オンラインでの副業に従事したり、より高額報酬が得られるフリーランスとして働くケースも増加していると指摘。いつでもどこでも働け、自分のスキルや専門性に合った仕事を選べることからこれらの仕事に人気が出ているとした。また、食品販売やeコマースなどの小規模ビジネスを自身で始めるケースも増えており、ベビーシッターやハウスクリーニング、ヘアメイクなどのサービスを提供しているという。
 そのため、雇用主は人材採用および雇用の継続のために、家庭と仕事の両立が可能な柔軟な勤務形態を考慮する必要があるとした。競争力のある賃金体系、心身の健康への配慮、前向きな企業文化、再教育やスキルアッププログラムも、人材採用に役立つという。
 市場教育センターのカルメロ・フェルリト最高責任者(CEO)は、ロックダウンによる失業者数の増加が多くの職種での賃金低下の一因となっていると述べた。また、外国人労働者受け入れ再開を求める経営者の声は強いとし、万が一外国人労働者の受け入れがなければ、給料は上昇する一方、国内労働者が望まない仕事に就かざるを得なくなり、生産工程の機械化も推進されると指摘した。
 フェルリトCEOはまた、大学などの高等教育を受けた新卒者が大幅増加したことが就職に悪影響を及ぼしていると言明。誰もが学位を取得すると、その学位の価値は急速に低下するとし、欧州では、新卒者の供給過剰により、伝統的なホワイトカラー職の給与が下がる一方、技術人材は需要が高く、給与も高くなっていると述べた。競争力のある労働市場へと改善するには、早期の労働市場参入機会を増やし、高等教育は高度技術資格の取得を目指す人に限定するなどの教育改革が必要だと強調した。
(ザ・スター、3月28日)