最低賃金引き上げ猶予、旅行業界が「約束反故にされた」

【クアラルンプール】 5月1日付けで最低賃金が1,500リンギに引き上げられたが、新型コロナウイルス「Covid-19」の影響を理由に猶予措置がとられるとの政府の約束が反故にされたとして旅行業界が怒っている。
 イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は最低賃金引き上げを発表した際、零細企業に猶予を与えると明言。次いでM.サラバナン人的資源相が、大きな経済的ダメージを受けているホスピタリティ産業や観光業も猶予の対象になると述べていた。
 マレーシア旅行代理店協会(MATTA)のタン・コクリャン会長は、ホテルや観光業界は猶予措置の約束が果たされなかったことで政府に裏切られたと感じていると言明。パンデミックで大きな打撃を受けた業界はパンデミック後も赤字を続けており、最低賃金引き上げを行うタイミングが悪いと述べた。
 タン氏はまた、以前交付された600リンギの賃金補助金には感謝しているとした上で、多くの会社は新たな最低賃金に対処するための財政的余裕がないと強調。「観光業、特に中小企業は苦戦しているようで、こうした厳しい状況は6月まで続くだろう。おそらく下半期には改善に向かうだろうが、本格的な回復は2023年になるだろう」と述べた。その上で、以前の約束に立ち返って2023年1月1日まで猶予期間を設けるべきだとし、政府に働きかけるために業界で嘆願書を取りまとめて提出する予定だとした。
 マレーシア・ホテル協会(MAH)のN.スブラマニアム会長も同様な見解で、観光業界が猶予対象となると聞いて安心していたが、突然の政策変更には対応できないと言明。「ホテル業界は最悪の打撃を受けている。賃金上昇を伴うため政府が賃金補助金で支援してくれることを願っている。我々は外国人労働者も不足している」とした。ハリラヤ(断食明け大祭)の連休では稼働率が最大80%と活況を呈したが、コロナ管理制度の違いにより外国人観光客の大幅な回帰はなかったと述べ、今後の状況を見守る必要があると述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月7日)