難民や不法滞在者の雇用許可申請巡り賛否両論

【クアラルンプール】 マレーシア経営者連盟(MEF)が労働力不足解消のため、難民や不法滞在の外国人労働者の労働を許可するよう政府に要請したことについて、賛否両論が噴出している。
 マレーシア労働組合会議(MTUC)のカマルル・バハリン・マンソル書記長は、難民や不法滞在の外国人労働者の採用は、安い労働力を調達する手段に過ぎないとし、マレーシア人を雇用しないことで5月1日より適用された最低賃金1,500リンギを無効にするものだと述べた。実際、M.サラバナン人的資源相および農園業界関係者と会談した際、彼らは人員がどの程度不足しているのか説明できず、マレーシア人から就労を拒否されたという具体的な証拠も示せなかったという。そのため、雇用主の「3D仕事(汚い・きつい・危険=日本の3Kに相当)に就きたいと思うマレーシア人が一人もいない」という主張は信じがたいと述べた。
 カマルル書記長はまた、パーム油の価格高騰やパンデミックによるゴム手袋の需要増で、企業は莫大な利益を得ていると指摘。賃金などの労働環境の水準を高め、労働者に利益を共有すべきだとし、難民や不法滞在者を雇用することで一時的には安い労働力を得られるかもしれないが、長期的に見ると国際社会に対しマレーシアが強制労働の国だという印象を与えるため、得策ではないとした。
 一方、マラヤ大学公共政策経営研究所のアスラム・アブド・ジャリル氏は、MEF案に賛意を表し、難民は長い間、働く権利を否定されてきたため、不安定な労働条件により搾取されてきたとし、労働許可を一時的なものではなく恒久的な措置とすべきだと言明。難民が低収入の非正規雇用に甘んじるしかない現状では、政府の税収も低く抑えられてしまっているという。難民の労働を合法化することで、人道的救済措置となる他、敬遠されがちな3D労働の労働者不足を埋めることができるため、双方にとって良い関係を築けると述べた。ただし、難民のスキルや教育レベルは多様であるため、彼らの仕事を3Dのみに限定するべきではなく、最低賃金や社会保障なども、マレーシア人労働者と同じ条件にするべきだとした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月9日)