未熟練労働者の技能向上に3000億リンギが必要=専門家

【ペタリンジャヤ】 マレーシアでは労働人口の60%にあたる1,000万人が未熟練労働者であるため、高所得国家を目指すには今後5年間で技能向上に3,000億リンギを投じる必要があると専門家は見ている。


 アブドル・ラザク大学のバルジョヤイ氏は、ラフィジ・ラムリ経済相が「マレーシアを高所得国家にすることに注力していく」と述べたことに対し、外国直接投資(FDI)が好調なのは、外国人投資家が未熟練労働者の多い国に投資することを好むためで、FDI誘致を続けながらも国内労働力のスキルアップを図り、インダストリー4.0(IR4.0)時代の到来に備えるべきだと述べた。政府は、未熟練労働者1,000万人の再訓練やスキルアップのために、5年間で3,000億リンギを投じる必要があり、そうしなければ他の新興国に追い越されてしまうと警告。3,000億リンギは5年で分割でき、労働者一人当たりでは3万リンギになるとし、政府が補助金に年間800億リンギを支出できるのなら、労働者スキルアップに年間600億リンギを出せないはずはないとした。


 サンウェイ大学経済学部のイア・キムレン教授も同様の意見で、マレーシアは過去30年間、成長鈍化で高所得国入りできない「中所得国の罠」にはまっており、これを是正する努力をしなければならないと述べた。高所得国とは、国民総所得(GNI)が一人当たり1万2,000米ドル(5万2,000リンギ)を超える国と定義されているが、現在のマレーシアの一人当たりのGNIは1万米ドル強だという。


 イア教授は、マレーシアが先進国入りするには3ー4年かかるとし、教育、経済、文化、社会的結束、インフラなど、先進国として重要な要素に注力する必要があると述べた。一方、高所得国になるためには所得格差を是正しなければならないが、現実には所得格差が拡大し続けており高所得化は容易ではなく、格差の解消には国連の持続可能な開発目標(UNSDG)の導入や教育が大きな役割を果たすとした。さらに所得格差の拡大は米国などを中心に世界的に生じている問題であり、マレーシアも同じ問題に陥らないよう最大限の努力をする必要があると述べた。
(ザ・サン、12月8日)