EPFの雇用主負担率引き上げ案、雇用者側が反発

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 労働組合のユニオンネットワーク国際マレーシア労働センター(UNI-MLC)が従業員積立基金(EPF)の雇用主負担率の大幅引き上げを求めていることについて、雇用者側から反発の声が上がっている。


 EPFの雇用主負担率は現在、給与額5,000リンギ以下では月給の13%となっているが、UNI-MLCは給与額4,000リンギ以下の低所得者を対象に20%への大幅引き上げを求めている。アンワル・イブラヒム首相はまだ閣議の議題に上がっていないものの、近く議題にあげる考えを示している。


 これに対しマレーシア経営者連盟(MEF)のサイド・フセイン会長は、経営コストの負担増になるとし、多くの企業、特に零細・中小企業(MSME)が存続できなくなると指摘。年金基金口座への拠出は従業員との連帯責任であるため、雇用主からの拠出額のみを増やすことは不公平だと批判した。またMSMEが全企業のうち98%以上を占めており、65万社を超える零細企業が存在するとし、MSMEが存続できるようにすることに注力すべきだとした。


 マレーシア製造業者連盟(FMM)のソー・ティエンライ会長も同意見で、世界経済が依然として脆弱であり、先行き見通しが不透明な状況においては、企業の負担を増やすことには賛成できないと強調。今年初めに実施した会員調査で今年上半期に国内および国外の両方で売上が全体的に減速すると予想されていることを挙げて、現時点では政府が労働者の収入を増やし、購買力を向上させるための短期的かつ即時のイニシアチブに注力すべきだと考えていると述べた。


 一方、マレーシア北部大学(UUM)のK.クペラン・ヴィスワナサン経済学教授は、マレーシアにはEPF以外に社会保障制度がないが、大部分のEPF加入者の預金額は少ないと指摘。雇用主はEPF拠出金が増加しても税控除を請求できるとして、EPF預金を増やすために雇用主側の負担率を引き上げるのはよい考えだと述べた。