5月1日から最低賃金1500リンギ、中小企業には猶予も


【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は19日、現在1,200リンギとなっている最低賃金を5月1日から1,500リンギに引き上げると発表した。従業員数5人未満の零細会社は適用外としており、零細企業の人件費負担増に配慮した格好となった。
 イスマイル首相は、「生活費上昇が国民、特に低所得者に与える影響を考慮した」と説明。すでに常勤公務員やGLCの正社員に対して最低賃金を1,500リンギに引き上げる旨を発表していることを挙げて、民間にも適用することを決めたと述べた。
 その一方で最低賃金引き上げの当面の対象は大企業とGLCのみにとどめるとし、賃金引き上げの余裕のない中小企業(SME)に対しては猶予期間を設ける考えを表明。具体的な対象セクターや猶予期間については明らかにしなかったものの、人的資源省や起業家開発協同組合省と話し合いを行っていく考えを示した。
 イスマイル首相の突然の発表を受け、M.サラバナン人的資源相は「閣議決定に沿ったもの」と述べたうえで、実施詳細については後日明らかにすると述べるにとどまった。
■産業界からは再考求める声■
 マレーシア製造業者連盟(FMM)のソー・ティエンライ会長は、最低賃金を一度に引き上げるのではなく段階的に引き上げるよう今からでも方針を見直しを要求。FMM会員企業で零細企業に与えられる適用外措置を受けられるのは2%以下だとして、大部分が影響を避けられないと述べた。その上で会員企業へのアンケートに基づき、現時点で100リンギ程度の引き上げなら受け入れられるとし、2023/2024年度に1,500リンギに引き上げるべきとした。
 マレーシア経営者連盟(MEF)のサイド・フセイン会長も同様な見方を示しており、5人未満となっている適用除外要件を20人以下にも適用するよう求めた。
 マレーシア華人商工会議所(中華工商聯合会、ACCCIM)の中小企業委員会は、最低賃金引き上げ問題については「利害関係者との協議はまだ続いているはず」として現時点での実施発表に不快感を示した。