雇用法1955改正法案の国会提出と祝日労働に関するQ&A

雇用法1955改正案の国会提出について

雇用法1955(Employment Act 1955)の改正法案が2021年10月25日に国会へ提出された。

その説明文には、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や、ILO(国際労働機関)によって要求される国際基準と慣行に準拠するために改正しようとすると述べられている。

会社側が注意すべき点を以下に挙げる。

1)出産休暇を60日から90日へ

2)妊娠中の従業員の雇用終了の制限
妊娠中の従業員の解雇の禁止や、もし妊娠中の従業員の雇用が終了した場合、会社はその終了が従業員の妊娠または妊娠に起因する病気が理由でないことを証明する責任を負う。

3)お父さんの産休3日間(最大5回まで)

4)従業員がフレックスタイム就業を申請できる
従業員が、勤務時間、勤務日、勤務地を変更するための柔軟な勤務形態について、書面による申請を会社へ提出することができる。会社は60日以内にその申請を承認または拒否する必要があり、拒否する場合は正当な理由を説明する必要あり。

5)雇用における差別の議論
雇用における差別の問題に関して、労使双方で紛争を調査し解決を命令する権限を労使関係局長官へ与える。

6)セクハラに関する掲示
セクハラに関する意識を高めるために会社の目立つ場所へ掲示することを要求する。

7)月給の日割り計算方法の変更
月給 ➗ その月の実際の就業すべき日数 ✖️ 実際に就業した日数   
現行は、月給 ➗ 26 ✖️ 就業した日数(土曜日のoff dayも含める)

弊社見解

今回、一番の注目点であった雇用法の適用範囲の変更案はなかった。
現行の雇用法の適用範囲は、月額賃金がRM2,000以下の従業員、及びすべての肉体労働者、ドライバーなど。
以前の改正案には、雇用法の適用範囲をすべての従業員へ拡大するという文言があった。
それによって、残業代の補償や労働時間の制限などがすべての従業員へ適用することになるという大変なことが起こることを懸念していた。
改正法案にこれがなかったことは特筆すべきことと思う。

上記法案は、議論された後にいくつかの規定が修正され、国会で承認されて初めて正式なものとなる予定。

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祝日労働に関する祝日賃金の支給について

以下の日に勤務する場合は祝日の賃金を支払わなければならないか?

新年(1月1日)
タイプ―サム
みいつの夜

また、全国的な祝日に勤務する場合は祝日の賃金を支払う必要があると思うが、州ごとの祝日に勤務する場合は祝日の賃金を支払う必要があるか?

弊社見解

マレーシアの多々ある祝日の中で法律上、会社は従業員に対して1年に最低11日の祝日を設ける必要があります(但し、一般的な日系企業は全ての”ナショナル・ホリデー”及び”ステート・ホリデー/州の祝日”を会社の祝日として設定しているのが現状です)。
会社の雇用契約書内に、【新年(1月1日)、タイプーサム、みいつの夜】が祝日として記載をされている場合は、 下記の給料をお支払い頂く必要があります。
祝日出勤の場合、その日の1日分の有給 + 2日分の給料の上乗せが必要です。
また、その日に残業をした場合は、通常の3倍の残業代が必要となります。

もし、【新年(1月1日)、タイプーサム、みいつの夜】が会社の雇用契約書内に祝日として記載されていない場合は通常勤務日となり、上乗せ等の支払いは不要です。

1年に最低11日の祝日を設けるということですが、この11日の中に下記の振替の出来ない祝日を含めても良いか?

メーデー(レイバーデー)
国王誕生日
国家記念日
マレーシアデー
州知事誕生日

弊社見解

最低11日の祝日の設定の内、上記5つの祝日は休日が義務付けられていますので、11日の祝日に含めて頂いて大丈夫です。 なお、上記祝日以外の残りの6祝日については、新年度が始まる前に計画を立て、雇用者と従業員の合意の下、別の日に変更する事が可能です。

祝日の設定は必ず従業員との合意が必要か? 会社からの一方的な決定ということでは問題が生じるか?

弊社見解

新年度開始の際に祝日の予定を発表すれば、会社主導で祝日を決定出来ます。

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