労働市場、失業率改善もパンデミック前水準にはまだ戻らず

【クアラルンプール】 マレーシアの失業率は直近数カ月改善途上にあるが、依然として67万人以上が失業中であり、労働市場がパンデミック前水準に回復するにはまだ時間を要する見通しだ。
ホンリョン・インベストメント・バンクによると、2月の失業率はパンデミック以降最低となる4.1%、失業者数も前年同月比13.6%減の67万1800人となったが、それでも2020年2月時点での失業率3.3%を上回っている。シンガポールでは2月の失業率は2.1%であり、すでにパンデミック前の水準に戻っているという。
HLIBリサーチは、技能や時間のミスマッチ率も依然として高いと注意を促している。昨年末時点で、高等教育を受けていても低技能職に就かざるを得なかった人が約184万人、フルタイムで働く意思があっても仕事量不足のため1週間当たりの就業時間が30時間未満にとどめられている人が29万3,100人いたという。
Amバンク・リサーチは、労働市場の構造的問題から自営業に移行する人が増えており、また、特定の分野では雇用数が減少していると指摘。農業と鉱業・採石業は外国人労働者への依存度が高いため雇用数が減少しており、特に農業では自動化技術の導入も遅れていることから、雇用数回復のペースも遅くなると予想している。外国人労働者採用はすでに再開されているが、認可率が低くなっていることから、農園、建設、製造業などでの人手不足がしばらく続くとした。
今年の平均失業率予想については、新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチン接種率の向上、エンデミック(風土病)期への移行に伴う国境再開、内需拡大、2022年度予算による政策支援などから各アナリストともに改善されるとしており、TAリサーチは4%、Amバンク・リサーチ、ケナンガ・リサーチがともに3.9%と予想。中央銀行バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)も先日4%という予想を示している。ケナンガ・リサーチは、失業率改善を妨げるリスクとして、新型コロナ変異株による感染再拡大、ロシアによるウクライナ侵攻の影響長期化、ゼロコロナ政策による中国の経済減速などを挙げた。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、4月12日)