成績不良の社員及び整理解雇に関するQ&A

マレーシアの日系企業の皆様より最近弊社に頂いたご質問の中から、成績不良の社員及び整理解雇に関するものと、弊社の見解をご紹介致します。

個人目標を了承した証拠について

10年以上雇用している正社員(営業職)が、個人目標売上に対しての営業成績が芳しくない。達成率は概ね年間として50%程度。
それを理由に、2019年に1回目の警告書を発行済。
現在、2022年の売上目標(1月から12月までの個人目標)をそれぞれの営業マンへ提示するにあたり、個人目標を了承した証拠(サインをもらう等)が必要か?
もし必要であれば、どのような形式で書類を作成すべきか?

弊社見解

当該人が会社からの与えられた目標を了承した旨のサインはもらっておいた方が良いと思います。書類の形式はどのようでも構いません。
但し、解雇を考える場合、10年選手を直近の勤務成績不良で解雇まで持っていくのはかなり厳しく、時間がかかると存じます。

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査問委員会開催の必要性について

成績不良の従業員が自主退職を希望、1カ月後の期日で解雇通知を出した。
本人は解雇通知書に同意のサインをして辞職したが、1か月後に労働局から「本人が復職したいと言っているので協議に来るように」との連絡があった。
最終的に、会社側は解雇前に査問委員会を開いていなかった点で落ち度があったという事で、労働局の担当官のアドバイスで2カ月分の給与を支払う事になった。
査問委員会の開催は、成績不良の従業員を解雇する際に必須か?

弊社見解

「本人が自主退職の意思を示していたか否か」は「正当な解雇が行われた否か」の裁定の争点にはならず、解雇する際、「成績不良 (又は不正行為) があった証明を会社側が行えるか否か」が重要になります。
因みに、労働局が「会社側は解雇前に査問委員会を開いていなかった」事を理由に和解金の支払いを命じたとのことですが、判例上、「査問委員会が開かれたか否か」は「正当な解雇が行われた否か」 の裁定には、考慮されないものとされています。

※ 雇用契約書や就業規則で「査問委員会を開く」旨が規定されている場合は別。
※ 労働局の担当官レベルですと、労働者寄りの、企業が応じる必要のない和解金支払いを提案してくる場合もございます。

従って当件、「警告書の発行、改善機会の付与、それでも改善しなかった」という一連の手順を踏んだ上で会社が解雇をしていれば、労働局が当理由で和解金支払いを命じたとしても、 会社はその要求に応じる必要が無かった可能性が高いかと存じます。

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整理解雇の対象となる従業員への補償金について

マレーシアでの一般論として :
・整理解雇対象になる従業員への補償金
・上記以外、会社が負担するべきコスト
について知りたい。

弊社見解

契約解除補償金の支払い期限:契約解除当日から数えて7日以内

契約解除補償金支払額  
 勤続年数2年未満:10日分の賃金 x 雇用年数  
 勤続年数2年以上5年未満:15日分の賃金 x 雇用年数  
 勤続年数5年以上:20日分の賃金 x 雇用年数

その他雇用者が負担すべきコスト
a.残年次有給休暇の支払い:年次有給休暇を消化する前に、雇用契約が解除された  場合には、雇用者はその消化されなかった年次有給休暇に相当する手当を契約解除日までに被雇用者へ支給する。
b.被雇用者が労働組合員であり、労働協約を結んでいる場合は、労働協約に記載  されている補償金を支給する。
c.解雇予告通知期間の代わりの賠償金の支払い:解雇通知の期限を待つ事なく雇用契約を解除する場合、雇用契約解除日までに解雇通知期限の不足分の期間に発生したはずの賃金を賠償金として被雇用者へ支払う事により、契約解除をする事が出来る。  
※契約が解除された最終日までに支払わなければならない。  
賠償金:(12カ月分の給料 ÷ 365日) x 取得資格 (1年につき10/15/20日) x 雇用期間 (勤続年数)  
 
(参考):雇用の解雇通知期限  
勤続年数2年未満:4週間前の通知  
勤続年数2年以上5年未満:6週間前の通知  
勤続年数5年以上:8週間前の通知

不当解雇と裁定されないよう、正当な整理解雇を実施する為には:
1. 整理解雇実施の事由を証明する
2. 法令及び慣習に基づき、正当な方法で人員削減を実施した証明をする
3. 会社は悪意なく、人員削減を実施した証明をする

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